4K/HDRモニター購入記

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当初そんな予定はなかったのだが、4Kモニターを2台も購入してしまった。機種はI-O DATA KH2750V-UHDとDell U2720Q。なぜそうなったのか、そしてその2機種はどんな機種なのか、長々とレビューしてみる。


目次

1台目: I-O DATA KH2750V-UHD

ホームシアターを構築する過程で、オーディオの方はほぼ完結したので、次はビジュアル方面に注力しようとした。今は4Kテレビや4Kモニターのエントリー機種はかなり安くなっており、HDR対応のものでも十分手が届くものとなっていることから、4K/HDR環境を構築しようとした。

まずは4Kモニターだ。現状机のスペースと机に置いてあるブックシェルフスピーカーのサイズ的に28インチ程度しか置けないのだが、27~28インチ程度の4Kモニターはエントリー機種かカラーマネジメントモニター、高級ゲーミングモニターぐらいしかない。あいにく数十万する高級機なんて買う余裕はないので、現状とりあえず4K/HDRなら何でもいいやと思い、27インチのエントリー機種、I-O DATAのKH2750V-UHDを購入した。

余談だが、このシリーズには仕様が同一で販路や保証年数が異なるモデルが3つ存在する。
・LCD-M4K271XDB: 家電量販店向け、5年保証
・EX-LD4K271DB: 通販向け、3年保証
・KH2750V-UHD: PCショップ向け、3年保証

23インチの旧メインモニター、MITSUBISHIのDiamondcrysta RDT234WXで動画を観る時は画面サイズに少し不満を抱いていたのだが、27インチのKH2750V-UHDではニアフィールドで使用すると程よい大画面感が得られる。また、27インチあると、4Kの高解像度が動画を観ていない時でも生きてくる。PC用モニターとしては、23インチフルHDより文字がくっきり見えるし、何より作業領域が広々としていて快適だ。

KH2750V-UHDの画質

KH2750V-UHD(左)はPC用モニターとしてはそこそこ高額な機種ではあるが、4K/HDRモニターとしてはエントリー機種なので、画質面では特筆すべきことはない。むしろ、発色やコントラストの好ましさで言えば、FHD/SDRのRDT234WX(右)の方が勝っている。

KH2750V-UHDは暗部階調が苦手なのか暗部を浮かせており、そのせいか高輝度側は白が飽和しがちで、コントラストが低く立体感に乏しい画になっている。発色もぱっとしない。色域をsRGBやP3に制限する設定は見当たらなかったため、おそらくパネルの色域をほぼ使い切る*表示になっているのだろうが、そもそもパネルの色域があまり広くないように見える。これではP3も満足にカバーできていないのではないだろうか。逆にRDT234WXのパネルは青が過剰に出る傾向がある。

*「パネルの色域をほぼ使い切る」云々の詳細については別記事で解説しているので参考にどうぞ。

最大輝度が250nitという点は、SDR用途ならともかくHDRモニターとしては残念。HDR対応を謳うならば、せめて400nit、できれば600nit以上はほしいところではある。それと、先程も述べた「暗部を浮かせている」という点もHDR映像の足を引っ張っている。Dolby Vision(及びDolby Atmos)のデモ映像「Core Universe」では、コントラストの高さを示すためにSDRの黒とHDRの黒(黒というよりも階調表現可能な暗部の限界)を比較するシーンがある。だが、KH2750V-UHDでは暗部が浮いているため、これをHDRで観ても黒の違いはごく僅かな差にとどまる。

Dolby Cinemaでは「Core Universe」とほぼ同内容の「Universe」が流れていて、「これが、本物の黒。」を体験した人もいるかも知れない。あのシーンのことである。ちなみにUniverseはYouTubeに上がっているが、残念ながらSDRとなっている。

KH2750V-UHDが「高画質」かどうかは測定してみないと実際のところどうなのかは分からないが、少なくとも民生用の視聴用ディスプレイとしては、あまり「好画質」とは言えないだろう。「4K/HDRに対応しました」と言うと聞こえはいいが、あくまでエントリー機種であって、画質を期待して買うものではないと思われる。これはハイレゾ対応を謳う有象無象のオーディオ機器にも同じことが言える。とは言え画質面に関しては値段なりでしかないと割り切って買ったので、仕方ないと思っている。しかし…

KH2750V-UHDのHDR問題

KH2750V-UHDでHDRコンテンツを再生すると、どうも赤が弱くなり、全体的に黄色っぽくなる。その上、その黄色は蛍光色をしている。黄色に寄ると言っても色温度の低下とかそういう話ではない。確かにKH2750V-UHDはHDR信号を受信すると色温度がD65固定になるなど一部の設定が変更不可能*になるが、SDRでD65に設定した状態で見る赤とHDR時の赤はまるで違う。

* メニュー内の「映像」「小画面」「VDTモード」が全面的に使用できなくなる他、「表示」内の「アスペクト比」「超解像デモモード」「CREX」などについても使用不可能となる。なお、HDRモニターではHDR時に輝度が変えられないものも存在するが、KH2750V-UHDはHDR時でも輝度は調整可能である。

それも「赤が弱くなった気がする」「黄色っぽくなった気がする」とかいう漠然とした話ではなく、そもそも普通に映像を観ていても不自然で気持ち悪いと感じる色味になる。具体的には人の肌が血色悪くなったり、木の色から赤みが取れて黄色っぽい不自然な色になったりしている。

HDR対応スマホ、Pixel 3 XL(色温度D67付近)と比較しても、KH2750V-UHDの方が赤が弱いのは明らかだ。

色温度がかなり異なるが、D72付近のXperia XZ2 Premiumと比較してもKH2750V-UHDの方が赤が弱いことがわかる。

また、上記で使用しているデモ映像(Core Universe)とほぼ同内容のもの(Universe)がHDR対応の映画館フォーマットであるDolby Cinemaでも流れるのだが、梅田ブルク7やMOVIX京都のDolby Cinemaでそれを観た際の色味は上記のスマホ2機種に近い。まさかDolby Cinemaですら異様に強い赤を出していると言ったことはないだろう。もしそんな事があるとすれば大問題だ。

KH2750V-UHDのパネルそのものが赤の発色が弱い可能性も考えられるが、SDRだとPixel 3 XLやXperia XZ2 Premiumと比較しても特段赤が弱いと言ったことはなく、明らかにHDRコンテンツを表示しているときのみ赤が弱くなっている。

KH2750V-UHDを早くも修理へ

この件をサポートに問い合わせたところ、修理対応になった。

診断内容:弊社検査にて、LED不灯(メイン基板不良)を確認いたしました。
修理内容:メイン基板を交換致しました。

修理報告書より

LEDというと恐らくバックライトのことだろうが、それの不灯で色が変わるとはどういうことだろうか。何らかの理由でHDR映像入力時はバックライトの色温度がすごく低くなるとかだろうか。などと考えつつ修理完了品でHDRコンテンツを表示してみたところ、なんと肝心の色味問題が治っていなかった。

LED不灯の意味がよくわからず(もしや電源ランプを設定でオフにしていたのを言っている?)、またそもそも肝心の色味問題が治っていなかったので、今回の修理内容の詳細な情報を尋ねたところ、以下のような回答を得た。(なお、以下の文章には誤字脱字等が含まれるが、これは原文ママである。)

お時間を頂きまして修理詳細につきまして、確認をした結果をご報告させていただきます。
LEDに月島手は、電源ランプのことも確認しておりましたが、電源ランプは設定のリセットで点灯することを確認しております。
今回の内奥は、LEDバックライトが暗い状態であったため、対応いたしました。
HDRコンテンツの表示が異常というご申告でしたが、暗い状態であったので対応いたしました。

ただ、現時点でお手元ではHDRについて改善されていないという状況であるとご申告いており、ご迷惑をおかけしております。誠に申し訳ございません。
恐れ入りますが、再度修理センターに製品をお預かりさせていただき、対応させていただきたいと思います。ご検討いただけますでしょうか。

サポートセンターからのメール連絡より

ということで2度目の修理に。今回は交換対応になった。

診断内容:製品の動作不良(電源LED不灯)を確認いたしました。HDRコンテンツの表示色異常は確認できませんでした。
処置内容:本体を交換いたしました。
特記事項:交換品での動作をお試し下さい。

修理報告書より

送られてきた新品の個体で色味を試したのだが、やはりHDR時は色が黄色に寄るというのは相変わらずだった。Dolby CinemaもXperia XZ2 PremiumもPixel 3 XLも色がおかしい、あるいは自分の色彩感覚そのものがおかしい、といった状況でなければ、このモニターが元々こういう仕様だということになる。

「赤が弱いのは意図的な仕様なので気に入らないなら買うな」という話でなければ、この件は設計段階での欠陥で、それに気づかないI-O DATAがおかしいと言わざるを得ない。今回の件で、今後I-O DATAのHDRモニターを買う気はなくなってしまった。

KH2750V-UHDのスタンド

もう一つの不満として、スタンドがかなり不安定なのが気になる。本体のボタンを操作したり、家が少し揺れた際にそこそこ揺れるので、結構気になる。自宅周辺は地盤が弱く、付近を大型トラックが通っただけでも上の方の階だとわずかながら揺れを感じる。KH2750V-UHDはその影響をモロに受ける。

エントリー機種特有の安いつくりや工学的な遊びだと割り切って使うにしてもかなり揺れがひどく、27インチのモニターがここまで揺れるのは恐怖だし、映像を観ているときに揺れると嫌でも気になる。このモニターを使う際は、モニターアーム等を利用したほうがいいかもしれない。

2台目: Dell U2720Q

KH2750V-UHDがRDT234WXに画質の好ましさで劣り、スタンドが不安定な上に、HDR時に色味が変になるのは仕様。これはもう早くも買い替え時かなと思った。KH2750V-UHDを購入してからわずか7ヶ月程度しか経っていない。次に選んだのはDellの27インチ4K/HDRモニター、U2720Q/U2720QM。

先程も言ったように、HDR対応モニターなら600nitぐらいはほしいところだが、27インチクラスの4K HDRモニターだと10万円以下の価格帯では350nit~400nit程度が限界。→ 2020/10/02追記: ほぼ10万円で600nit出せるLG 27GN950が発売されました。

U2720Q/U2720QMのスペックシート上の輝度は350nitだが、HDR時のみピーク輝度が400nitに上がる旨が説明書に書いてあった。DisplayHDR 400の認証も取得している。

注意: HDRモード時のピーク輝度は 400 nit(標準値)です。HDR再生中の実際の値と継続時間は、ビデオコンテンツに応じて異なる場合があります。

[PDF] Dell U2720Q ユーザーガイド

この価格帯の27インチDisplayHDR 400認定モニターだとLGの27UL600/27UL650、27UL850なども視野に入ってくるが、U2720Q/U2720QMに決めた理由は、

  • 工場出荷時にsRGBにおいて色差ΔEが2未満にキャリブレーションされている点
  • sRGB/Rec.709を99%カバーし、更にDCI-P3を95%カバーしている点 (LGのものはsRGB 99%しか謳っていない)
  • 1300:1と非光沢IPSにしては比較的高いコントラスト比 (LGのもの含め他機種はだいたい1000:1が多い)
  • ドット欠けがあれば無料で交換してもらえる「プレミアムパネル保証」
  • 修理や交換が必要になった際には良品を先に送ってもらえる「良品先出しサービス」

などだ。逆に、LGのものにはある超解像やSDRのHDR化機能、暗部を見えやすくするブラックスタビライザーなどはU2720Q/U2720QMにはない。個人的には機能が多いことよりもパネルがしっかりしている方がいいと思ったので、U2720Q/U2720QMを選択した。

パネル以外ではDellの良品先出しサービスが特に魅力的に思えた。KH2750V-UHDを2度修理に出した際にはFHDのRDT234WXをメインで使うことになり、画面サイズや解像度の低さからくる作業領域の狭さに耐えなければならなかったからだ。


U2720QとU2720QMは本体の仕様は同一で、付属ケーブルと販路が異なる。U2720QにはDisplayPortケーブルが、U2720QMにはHDMIケーブルが付属する。U2720QはDellオンラインストアの他、ひかりTVショッピングなどでも取り扱われている。U2720QMはAmazon限定品。Dell直販とAmazonでセール合戦をしており、更にLINEショッピングと楽天リーベイツのキャンペーン状況も考慮すると、時期によってどちらが安いのかが異なる。

買ったタイミングはDellオンラインストアがクーポンを配布していたことと、LINEショッピングがDellオンラインストアにて楽天リーベイツよりも還元率の高いキャンペーンをやっていたので、DellオンラインストアにてU2720Qを購入した。購入から2日後には届いた。箱に直接送り状を貼って送られてきたため、箱には多数の擦り傷がついていた。箱が黒いのでよく目立つ。

キャリブレーション時のレポートが同梱されていた。これを見る限りでは、sRGBにおいて平均ΔEは1未満で、最大でも1.2程度といったところだろうか。なかなかすごい。

無駄に4K2面を含むトリプルモニター構成になった。

U2720QのHDR/HDCP対応状況

対応しているHDR方式について公式サイトやマニュアルには載っていなかったため弊環境にて検証したところ、HDR10(UHDBDやOTTなどで使用)には対応していたが、HLG(新4K8K衛星放送等)は非対応だった。Windows 10のHDRはHDR10さえ対応していれば利用できるため、U2720QでもWindows 10のHDRを使用することができる。HDR10+やDolby Visionは対応機器を持っていないので検証できなかったが、そもそもこれら2つはロゴも認証プログラムもあり、対応していたら公式サイトでそれを謳うはずなので、書いていないということはおそらく対応していないものと思われる。

なお、KH2750V-UHDに関してもHDR10のみの対応だ。HLGやHDR10+、Dolby Visionに対応していないのは何もKH2750V-UHDやU2720Qがケチっているからではなく、他の一般的なPC用HDRモニターでも対応していないものが多い。HLGやDolby Visionに対応しているのは今のところカラマネモニターやゲーミングモニターの上位機種など、高級機ばかりだ。

テレビだと最近の4K/HDR対応モデルはHLGに対応するのは当たり前となっており、Dolby Visionに関しても安価な対応テレビが増えてきたので、今後それら対応した安価なPC用モニターの登場が待たれる。なお、HDR10+に関しては規格そのものがマイナーなので採用作品が少なく、テレビやプレーヤーへの対応もあまり進んでいない。

だが、仮にHDR10+やDolby Visionに対応していないからと言って、Ultra HD Blu-rayやOTT等でそれらを採用したタイトルをHDRで観られないといったことはない。HDR10+や家庭向けDolby VisionはHDR10を拡張して設計されており、HDR10しか対応しない機器ではHDR10に落として再生できるようになっている。それに対しHLGはHDR10/HDR10+/Dolby VisionのようなPQ方式ではないため、KH2750V-UHDやU2720Qで新4K8K衛星放送をHDRで観るなら、HLG/PQ変換機能を備えたパナソニックやシャープ等のレコーダーやチューナーが必要となる。

そもそもHDR10+やDolby Visionの動的メタデータは、輝度が低いパネルを搭載した製品や映像処理エンジンが貧弱な製品のトーンマッピング(コンテンツの輝度をパネルに割り付ける作業)を独自に制御することで、低スペック機での見え方を制作時にある程度管理するといったものであり、それらに対応したからと言って必ずしも高画質になるとは限らない。Dolby VisionにはHDR10/HDR10+と違って12bit対応というメリットもあるにはあるが、今の所12bitの恩恵を受けられるモニターは少ない。

本機種はDisplayHDR 400認定だ。勘違いされがちだが、これまでに出てきたHDR10、HDR10+、Dolby Vision、HLGは全て映像信号の規格であり、HDR対応モニターの表示性能に関する認証規格であるDisplayHDRとは全く異なるものである。HDR10やHDR10+の10は色深度が10bitであるということを表すものであり、DisplayHDRの後の数字はパネルのピーク輝度を表すものである。400以外にも500/600/1000/1400、さらに有機ELやローカルディミング対応液晶向けの400 True Black/500 True Blackも存在する。

また、公式サイトにはHDCP 1.4までと書かれているが、マニュアルにはきちんとHDCP 2.2と表記があるし、実際HDCP 2.2がかかった信号も問題なく処理できており、UHDBD、Netflixの4Kコンテンツ、新4K衛星放送などを2Kダウンコンバートされることなく(= HDCP 1.4に落とされること無く)4Kで楽しむことができた。

U2720Qのプリセットモード

説明書の説明は大雑把なので、自分なりに検証してみた。測定した値ではなく自分の目で見た結果なので、正確性は保証できない。

表示色域 色温度 (白色点)
標準 パネル (ほぼP3) パネル (D65付近)
ComfortView パネル (ほぼP3) D50以下?
ムービー パネル (ほぼP3) D93付近
ゲーム パネル (ほぼP3) D65付近
色温度 パネル (ほぼP3) D50、D57、D65、
D75、D93、D100
色空間 sRGB Rec.709 (99%) D65付近
DCI-P3 P3 (95%) D63付近
ユーザーカラー 設定値
(未調整時:パネル)
設定値
(未調整時:パネル)

色空間モードで色域を選択するか、ユーザーカラーモードで色を調整でもしない限り、基本的にはKH2750V-UHD同様パネルの色域にまで拡張されるようだ。別にこれは悪いわけではなく、「高画質」からは確かに遠のくが、きちんと処理されていれば好ましい画に近づけることができる。後ほどこのモードを評価してみる。個人的には説明書で「映画に最適です」と謳っているムービーモードの色温度がD93なのが解せない。

色空間モードでは各規格独自の白色点が使用される。「なんで色域と色温度を別々に設定できないんだ」と思う方もいるかもしれないが、そもそもsRGBやDCI-P3という規格は色域だけでなく白色点(色温度)やガンマも定められている規格であり、U2720Qはそれらの規格に沿った表示をしているだけである。

色温度モードでは色域を選択できない。映像ではガンマ1.9(Rec.709本来?)、2.2(sRGB)、2.4(BT.1886)、2.6(DCI)などのRec.709が用いられている。海外ではこれらの色温度にD65が使用されることが多いのだが、日本ではD93で制作されることが多い。D65のRec.709コンテンツを(ガンマはともかく)ちゃんと表示するならsRGBモードで対応できるが、D93のRec.709コンテンツの色域も色温度も正確に表示する術はU2720Qには存在しない。

また、DCI-P3と似た規格にDisplay P3という規格もある。DCI-P3は映画館におけるSDRのデジタルシネマ仕様の規格(P3、D63、ガンマ2.6)で、Display P3はAppleがDCI-P3の色域(P3)にsRGBの白色点(D65)とガンマ(2.2)を組み合わせた規格である。U2720Qが表示モードとして対応しているのはDCI-P3の方である。

なお、カラーマネジメント対応ソフトでICCプロファイルを使用した画像表示でもしない限り、モニターは映像信号の色域を判断する術がないので、DCI-P3モードでsRGBなどのコンテンツを表示した際には、そのコンテンツの色域はP3に拡張された状態で表示される。

KH2750V-UHDではHDR時は一部の設定が変更不可能になると書いたが、U2720QもHDR時には制約があり、プリセットモードと輝度が変更不可能になる。ちなみにSDRであってもプリセットモードでムービーモードかゲームモードを使用した際にもなぜか輝度が調整不可能となる。

U2720Qの画質

まずはプリセットモード:標準にてSDRコンテンツの表示を試してみる。左がU2720Q、右がKH2750V-UHDである。

まず気づくのは、このモニターのパネルは原色に近いぐらいの強い赤色を出せるということ。DCI-P3モードと比較しても赤が強いぐらいだ。これだけ強い赤が出せるのを見ると、他機種のパネルの赤色が朱色に見えてくる。緑や青に関しては赤ほど強くはなく、DCI-P3モードとほぼ変わらない。各色ちゃんとしっかり出ているが、かと言って彩度が強く派手すぎるといった感じでもない。

この赤の発色はとても写真では伝えられないので、実機を見る機会があればぜひその目で確かめてほしいのだが、このモニターは販路が狭く、家電量販店ではそもそも取り扱っていなかったりする。このモニターの良さを購入前に体験しにくいのが惜しい。

また、高輝度部が飽和していたり、低輝度部が黒く潰れてしまっているということもほぼない。かと言って低コントラストで眠い画になってしまっているということもない。コントラスト比がKH2750V-UHDの1000:1から1300:1に向上したおかげかDellの画作りのおかげか、U2720Qは色もコントラストもバランスの取れた表示をしていて、好ましい画質だと感じられた。KH2750V-UHDとは大違いだ。


次はHDRコンテンツをSmart HDRのDisplayHDRモードで。左がU2720Q、右がKH2750V-UHD。4K/HDR対応のAVアンプ(YAMAHA RX-V781)でスプリット出力しているので、入力信号は全く同じ。

やはりKH2750V-UHDはU2720Qと比較しても黄色っぽい。特に果物の映像では上のオレンジと思しき果物が黄色に寄っている上に、下のレモンと思しき果物が蛍光色をしており、もはや別の果物に見える。その隣のカメレオンの映像では、木が不自然に黄色い。おかしいのはXperia XZ2 PremiumでもPixel 3 XLでもDolby Cinemaでも自分の色彩感覚でもなく、KH2750V-UHDだった。

U2720Q(350nit/HDR時ピーク400nit)はKH2750V-UHD(250nit)よりも輝度が高いので、HDRコンテンツを表示するとKH2750V-UHDよりも白飛びが起きにくい。例えば画像6枚目、カメレオンの口から出ている炎の白く飛んでいる箇所がKH2750V-UHDよりも少ないのがお分かりいただけるだろうか。また、U2720QはKH2750V-UHDよりも暗部階調の再現性が高く、暗部をそこまで浮かせたりはしていないので、先程KH2750V-UHDの評価でも使用した「Core Universe」の黒の比較シーンでは、後者(HDR)の黒のほうがより締まって見える。

HDRでは、SDRの限界を超えた高輝度部や低輝度部にきちんと色を置いてあげることができる。明るいところを明るいまま、暗いところを暗いまま表現できることによって、コントラストが向上し画に立体感が生まれたり、色に透明感が出たりするというのが特徴だ。そのため、HDRでは輝度と暗部階調は画質面においてとても重要な要素だ。

HDR10やDolby VisionなどのPQカーブを用いた方式のHDRでは、表示装置が出せないぐらい高い輝度の色は白く飛ばされる(実際にはある程度高輝度部が低輝度部にトーンマッピングされて表示されるが)。また、KH2750V-UHDのように暗部階調の再現性に限界のある機種は、暗部を浮かす(液晶に多い)か、逆に潰してしまう(有機ELに多い)ことがある。これでは当然画質は悪くなってしまう。U2720Qでも正直十分とは言えないが、KH2750V-UHDよりは高品質な表示が可能となっている。

U2720QとKH2750V-UHDの映像情報表示

映像情報表示の詳細さに関しては、解像度、FPS、クロマサブサンプリング、色深度、SDR/HDRを表示できるKH2750V-UHDに満足していた(要設定)。

KH2750V-UHDの映像情報表示

しかし、U2720Qでは解像度、I/P、色深度、SDR/HDRしか表示できない。しかもU2720Qは日本語が怪しく、上の画像で言えば「デイスプレー情報」だとか「モテル」だとか…

U2720Qの映像情報表示

FPSならAVアンプで表示できるが、クロマサブサンプリングはどうしようもない。

YAMAHA RX-V781(AVアンプ)の映像情報表示

それに、U2720Qの情報表示はメニューの階層を辿らないと出ないが、KH2750V-UHDのは電源ボタンを除く任意のボタン一発で出すことができる(ダイレクト機能オフ時)。

映像情報の出しやすさと詳細さに関しては、KH2750V-UHDの方が強い。なお、先程挙げたLGのモニターも、展示機を触ってみた限りではKH2750V-UHDほど詳細な表示はできなさそうだった。この点(だけ)はKH2750V-UHDを気に入っている。

U2720QとDIGAの相性問題(?)

KH2750V-UHDもU2720Qもパネルの色深度は各色10bit(U2720Qは8bit+FRC、KH2750V-UHDは不明)だが、各色12bitの信号を受け取ることもできる。

KH2750V-UHDでは、PanasonicのDIGA DMR-4W200(4Kレコーダー/UHDBDプレーヤー)で「DeepColor出力の設定」を「オート(12bit優先)」にすると、SDRコンテンツでもHDRコンテンツでも12bit出力された。

(先程の画像の流用)

U2720Qでも「オート(12bit優先)」ではSDRコンテンツは12bit出力(U2720QではRGB合計36bit表示)されたが、

(先程の画像の流用)

HDRコンテンツはなんと8bit(合計24bit)出力に制限された。SDRならともかく、HDRで8bitは厳しい。

U2720Qでは、HDR映像入力時は右上に「HDR+」と表示される。

HDRを10bitで出力するなら「オート(10bit優先)」にしないといけなかった。この場合、SDRコンテンツもHDRコンテンツも10bit出力となる。

なんだかよく分からない問題だったが、幸いU2720Qに色深度を表示する機能があったので気づくことができた。

おわりに

Dell U2720Qは400nitというのがHDRには少し物足りないが、SDRだろうがHDRだろうが重要な色精度と各色域のカバー率が一定以上の水準にあり、実際の表示も好ましい画質であり、スタンド調整の自由度が高く、プレミアムパネル保証や良品先出しサービスが付いてくる。こんなモニターが5万円程度で手に入ったということを考えると、すごく満足度の高い買い物となった。

井戸水

ガジェット、オーディオ、映画館が好きな情報系の大学生。

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