4K/HDRモニター購入記

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当初そんな予定はなかったのだが、4K モニターを2台も購入してしまった。機種は I-O DATA KH2750V-UHD と Dell U2720Q。なぜそうなったのか、そしてその2機種はどんな機種なのか、長々とレビューしてみる。


目次

1台目: I-O DATA KH2750V-UHD

ホームシアターを構築する過程で、オーディオの方はほぼ完結したので、次はビジュアル方面に注力しようとした。今は 4K テレビや 4K モニターのエントリー機種はかなり安くなっており、HDR 対応のものでも十分手が届くものとなっていることから、4K / HDR 環境を構築しようとした。

まずは 4K モニターだ。現状机のスペースと机に置いてあるブックシェルフスピーカーのサイズ的に28インチ程度しか置けないのだが、27~28 インチ程度の 4K モニターはエントリー機種かカラーマネジメントモニター、高級ゲーミングモニターぐらいしかない。あいにく数十万する高級機なんて買う余裕はないので、現状とりあえず 4K / HDR なら何でもいいやと思い、27インチのエントリー機種、I-O DATA の KH2750V-UHD を購入した。

余談だが、このシリーズには仕様が同一で販路や保証年数が異なるモデルが3つ存在する。
・LCD-M4K271XDB: 家電量販店向け、5年保証
・EX-LD4K271DB: 通販向け、3年保証
・KH2750V-UHD: PCショップ向け、3年保証

23インチの旧メインモニター、MITSUBISHI の Diamondcrysta RDT234WX で動画を観る時は画面サイズに少し不満を抱いていたのだが、27インチの I-O DATA KH2750V-UHD ではニアフィールドで使用すると程よい大画面感が得られる。また、27インチあると、4K の高解像度が動画を観ていない時でも生きてくる。PC 用モニターとしては、23インチフル HD より文字がくっきり見えるし、何より作業領域が広々としていて快適だ。

KH2750V-UHD の画質

KH2750V-UHD (左) は PC 用モニターとしてはそこそこ高額な機種ではあるが、4K / HDR モニターとしてはエントリー機種なので、画質面では特筆すべきことはない。むしろ、発色やコントラストの好ましさで言えば、FHD / SDR の RDT234WX (右) の方が勝っている。

KH2750V-UHD は暗部階調が苦手なのか暗部を浮かせており、そのせいか高輝度側は白が飽和しがちで、コントラストが低く立体感に乏しい画になっている。発色もぱっとしない。色域を sRGB や P3 に制限する設定は見当たらなかったため、おそらくパネルの色域をほぼ使い切る*表示になっているのだろうが、そもそもパネルの色域があまり広くないように見える。これでは P3 も満足にカバーできていないのではないだろうか。逆に RDT234WX のパネルは青が過剰に出る傾向がある。

*「パネルの色域をほぼ使い切る」云々の詳細については別記事で解説しているので参考にどうぞ。

最大輝度が 250nit という点は、SDR 用途ならともかく HDR モニターとしては残念。HDR 対応を謳うならば、せめて 400nit、できれば 600nit 以上はほしいところではある。それと、先程も述べた「暗部を浮かせている」という点も HDR 映像の足を引っ張っている。Dolby Vision (及び Dolby Atmos) のデモ映像「Core Universe」では、コントラストの高さを示すために SDR の黒と HDR の黒 (厳密には黒というよりも階調表現可能な暗部の限界) を比較するシーンがある。だが、KH2750V-UHD では暗部が浮いているため、これを HDR で観ても黒の違いはごく僅かな差にとどまる。

Dolby Cinema では「Core Universe」とほぼ同内容の「Universe」が流れていて、「これが、本物の黒。」を体験した人もいるかも知れない。あのシーンのことである。Universe は YouTube に上がっているが、残念ながら SDR となっている。

KH2750V-UHD が「高画質」かどうかは測定してみないと実際のところどうなのかは分からないが、少なくとも民生用の視聴用ディスプレイとしては、あまり「好画質」とは言えないだろう。「4K / HDR に対応しました」と言うと聞こえはいいが、あくまでエントリー機種であって、画質を期待して買うものではないと思われる。これはハイレゾ対応を謳う有象無象のオーディオ機器にも同じことが言える。とは言え画質面に関しては値段なりでしかないと割り切って買ったので、仕方ないと思っている。しかし…

KH2750V-UHD の HDR 問題

KH2750V-UHD で HDR コンテンツを再生すると、どうも赤が弱くなり、全体的に黄色っぽくなる。その上、その黄色は蛍光色をしている。黄色に寄ると言っても色温度の低下とかそういう話ではない。確かに KH2750V-UHD は HDR 信号を受信すると色温度が D65 固定になるなど一部の設定が変更不可能*になるが、SDR で D65 に設定した状態で見る赤とHDR時の赤はまるで違う。

* メニュー内の「映像」「小画面」「VDT モード」が全面的に使用できなくなる他、「表示」内の「アスペクト比」「超解像デモモード」「CREX」などについても使用不可能となる。なお、HDR モニターでは HDR 時に輝度が変えられないものも存在するが、KH2750V-UHD は HDR 時でも輝度は調整可能である。

それも「赤が弱くなった気がする」「黄色っぽくなった気がする」とかいう漠然とした話ではなく、そもそも普通に映像を観ていても不自然で気持ち悪いと感じる色味になる。具体的には人の肌が血色悪くなったり、木の色から赤みが取れて黄色っぽい不自然な色になったりしている。

HDR 対応スマホ、Pixel 3 XL (色温度 D67 付近) と比較しても、KH2750V-UHD の方が赤が弱いのは明らかだ。

色温度がかなり異なるが、D72 付近の Xperia XZ2 Premium と比較しても、KH2750V-UHD の方が赤が弱いことがわかる。

また、先程上記で使用しているデモ映像とほぼ同内容のものが Dolby Cinema でも流れると紹介したが、梅田ブルク7 や MOVIX京都 の Dolby Cinema でそれを観た際の色味は上記のスマホ2機種に近い。まさか Dolby Cinema ですら異様に強い赤を出していると言ったことはないだろう。もしそんな事があるとすれば大問題だ。

KH2750V-UHD のパネルそのものが赤の発色が弱い可能性も考えられるが、SDR だと Pixel 3 XL や Xperia XZ2 Premium と比較しても特段赤が弱いと言ったことはなく、明らかに HDR コンテンツを表示しているときのみ赤が弱くなっている。

KH2750V-UHD を早くも修理へ

この件をサポートに問い合わせたところ、修理対応になった。

診断内容:弊社検査にて、LED不灯(メイン基板不良)を確認いたしました。
修理内容:メイン基板を交換致しました。

修理報告書より

「LED というと恐らくバックライトのことだろうが、それの不灯で色が変わるとはどういうことだろう」「何らかの理由でHDR映像入力時はバックライトの色温度がすごく低くなるとかだろうか」などと考えつつ修理完了品で HDR コンテンツを表示してみたところ、なんと肝心の色味問題が治っていなかった。

LED 不灯の意味がよくわからず (もしや電源ランプを設定でオフにしていたのを言っている?)、またそもそも肝心の色味問題が治っていなかったので、今回の修理内容の詳細な情報を尋ねたところ、以下のような回答を得た。(なお、以下の文章には誤字脱字等が含まれるが、これは原文ママである。)

お時間を頂きまして修理詳細につきまして、確認をした結果をご報告させていただきます。
LEDに月島手は、電源ランプのことも確認しておりましたが、電源ランプは設定のリセットで点灯することを確認しております。
今回の内奥は、LEDバックライトが暗い状態であったため、対応いたしました。
HDRコンテンツの表示が異常というご申告でしたが、暗い状態であったので対応いたしました。

ただ、現時点でお手元ではHDRについて改善されていないという状況であるとご申告いており、ご迷惑をおかけしております。誠に申し訳ございません。
恐れ入りますが、再度修理センターに製品をお預かりさせていただき、対応させていただきたいと思います。ご検討いただけますでしょうか。

サポートセンターからのメール連絡より

ということで2度目の修理に。今回は交換対応になった。

診断内容:製品の動作不良(電源LED不灯)を確認いたしました。HDRコンテンツの表示色異常は確認できませんでした。
処置内容:本体を交換いたしました。
特記事項:交換品での動作をお試し下さい。

修理報告書より

送られてきた新品の個体で色味を試したのだが、やはり HDR 時は色が黄色に寄るというのは相変わらずだった。Dolby Cinema も Xperia XZ2 Premium も Pixel 3 XL も色がおかしい、あるいは自分の色彩感覚そのものがおかしい、といった状況でなければ、このモニターが元々こういう仕様だということになる。

「赤が弱いのは意図的な仕様なので気に入らないなら買うな」という話でなければ、この件は設計段階での欠陥で、それに気づかない I-O DATA がおかしいと言わざるを得ない。今回の件で、今後 I-O DATA の HDR モニターを買う気はなくなってしまった。

KH2750V-UHD のスタンド

KH2750V-UHD のもう一つの不満として、スタンドがかなり不安定なのが気になる。本体のボタンを操作したり、家が少し揺れた際にそこそこ揺れるので、結構気になる。自宅周辺は地盤が弱く、付近を大型トラックが通っただけでも上の方の階だとわずかながら揺れを感じる。KH2750V-UHD はその影響をモロに受ける。

エントリー機種特有の安いつくりや工学的な遊びだと割り切って使うにしてもかなり揺れがひどく、27インチのモニターがここまで揺れるのは恐怖だし、映像を観ているときに揺れると嫌でも気になる。このモニターを使う際は、モニターアーム等を利用したほうがいいかもしれない。

2台目: Dell U2720Q

KH2750V-UHD が RDT234WX に画質の好ましさで劣り、スタンドが不安定な上に、HDR 時に色味が変になるのは仕様。これはもう早くも買い替え時かなと思った。KH2750V-UHD を購入してからわずか7ヶ月程度しか経っていない。次に選んだのは Dell の27インチ 4K / HDR モニター、U2720Q / U2720QM。

先程も言ったように、HDR 対応モニターなら600nitぐらいはほしいところだが、27インチクラスの 4K / HDR モニターだと10万円以下の価格帯では 350nit ~ 400nit 程度が限界。(2020/10/02追記: ほぼ10万円で 600nit 出せる LG 27GN950 が発売された)

U2720Q / U2720QMのスペックシート上の輝度は 350nit だが、HDR時のみピーク輝度が 400nit に上がる旨が説明書に書いてあった。DisplayHDR 400 の認証も取得している。

注意: HDRモード時のピーク輝度は 400 nit(標準値)です。HDR再生中の実際の値と継続時間は、ビデオコンテンツに応じて異なる場合があります。

[PDF] Dell U2720Q ユーザーガイド

この価格帯の27インチ DisplayHDR 400 認定モニターだと LG の 27UL600 / 27UL650、27UL850なども視野に入ってくるが、U2720Q / U2720QM に決めた理由は、

  • 工場出荷時にsRGBにおいて色差ΔEが2未満にキャリブレーションされている点 (色精度は使用しているうちにずれてくるものなので定期的にキャリブレーションできないと結局意味はないが、そもそもLGは出荷時キャリブレーションの時点で色精度が低いと聞く)
  • sRGB / Rec.709 を 99% カバーし、更に DCI-P3 を 95% カバーしている点 (LG のものは sRGB 99% しか謳っていない)
  • 1300:1 と非光沢 IPS にしては比較的高いコントラスト比 (LG のもの含め他機種はほとんど 1000:1)
  • ドット欠けがあれば無料で交換してもらえる「プレミアムパネル保証」
  • 修理や交換が必要になった際には良品を先に送ってもらえる「良品先出しサービス」

などだ。逆に、LG のものにはある超解像や SDR の HDR 化機能、暗部を見えやすくするブラックスタビライザーなどは U2720Q / U2720QM にはない。個人的には機能が多いことよりもパネルがしっかりしている方がいいと思ったので、U2720Q / U2720QM を選択した。

パネル以外では Dell の良品先出しサービスが特に魅力的に思えた。KH2750V-UHD を2度修理に出した際には FHD の RDT234WX をメインで使うことになり、画面サイズや解像度の低さからくる作業領域の狭さに耐えなければならなかったからだ。


U2720Q と U2720QM は本体の仕様は同一で、付属ケーブルと販路が異なる。U2720Q には DisplayPort ケーブルが、 U2720QM には HDMI ケーブルが付属する。U2720Q は Dell オンラインストアの他、ひかりTVショッピングなどでも取り扱われている。U2720QM は Amazon 限定品。Dell 直販と Amazon でセール合戦をしており、更に LINE ショッピングと楽天リーベイツのキャンペーン状況も考慮すると、時期によってどちらが安いのかが異なる。

買ったタイミングは Dell オンラインストアがクーポンを配布していたことと、LINE ショッピングが Dell オンラインストアにて楽天リーベイツよりも還元率の高いキャンペーンをやっていたので、Dell オンラインストアにて U2720Q を購入した。購入から2日後には届いた。箱に直接送り状を貼って送られてきたため、箱には多数の擦り傷がついていた。箱が黒いのでよく目立つ。

キャリブレーション時のレポートが同梱されていた。これを見る限りでは、sRGB において平均 ΔE は1未満で、最大でも1.2程度といったところだろうか。なかなかすごい。

無駄に 4K 2面を含むトリプルモニター構成になった。

U2720Q の HDR / HDCP 対応状況

対応している HDR 方式について公式サイトやマニュアルには載っていなかったため弊環境にて検証したところ、UHD BD や動画配信サービスなどで使用される HDR10 には対応していたが、新 4K8K 衛星放送等で使用される HLG は非対応だった。Windows 10 の HDR は HDR10 さえ対応していれば利用できるため、U2720Q でも Windows 10 の HDR を使用することができる。HDR10+ や Dolby Vision は対応機器を持っていないので検証できなかったが、そもそもこれら2つはロゴも認証プログラムもあり、対応していたら公式サイトでそれを謳うはずなので、書いていないということはおそらく対応していないものと思われる。

なお、KH2750V-UHD に関しても HDR10 のみの対応だ。HLG や HDR10+、Dolby Vision に対応していないのは何も KH2750V-UHD や U2720Q がケチっているからではなく、他の一般的な PC 用 HDR モニターでも対応していないものが多い。HLG や Dolby Vision に対応しているのは今のところカラマネモニターやゲーミングモニターの上位機種など、高級機ばかりだ。

テレビだと最近の 4K / HDR 対応モデルは HLG に対応するのは当たり前となっており、Dolby Vision に関しても安価な対応テレビが増えてきたので、今後それら対応した安価な PC 用モニターの登場が待たれる。なお、HDR10+ に関しては規格そのものがマイナーなので採用作品が少なく、テレビやプレーヤーへの対応もあまり進んでいない。

だが、仮に HDR10+ や Dolby Vision に対応していないからと言って、UHD BD や動画配信サービス等でそれらを採用したタイトルを HDR で観られないといったことはない。HDR10+ や家庭向け Dolby Vision は基本的には (Dolby Vision の一部のプロファイルを除き) HDR10 を拡張したような設計になっており、HDR10 しか対応しない機器では HDR10 に落として再生できるようになっている。それに対し HLG は HDR10 / HDR10+ / Dolby Vision (Profile 8.4を除く) のような PQ 方式ではないため、KH2750V-UHD や U2720Q で新 4K8K 衛星放送を HDR で観るなら、HLG/PQ 変換機能を備えたパナソニックやシャープ等のレコーダーやチューナーが必要となる。

そもそも HDR10+ や Dolby Vision の動的メタデータは、輝度が低いパネルを搭載した製品や映像処理エンジンが貧弱な製品のトーンマッピング(コンテンツの輝度をパネルに割り付ける作業)を独自に制御することで、低スペック機での見え方を制作時にある程度管理するといったものであり、それらに対応したからと言って必ずしも高画質になるとは限らない。Dolby Vision には HDR10 / HDR10+ と違って 12bit 対応というメリットもあるにはあるが、今の所 12bit の恩恵を受けられるモニターは少ない(が、10bit映像を10bit表示するより、12bit映像を10bit表示したほうがきれいになる可能性はある)。

本機種は DisplayHDR 400 認定だ。勘違いされがちだが、これまでに出てきた HDR10、HDR10+、Dolby Vision、HLG は全て映像信号の規格であり、HDR 対応モニターの表示性能に関する認証規格である DisplayHDR とは全く異なるものである。HDR10 や HDR10+ の 10 は色深度が 10bit であるということを表すものであり、DisplayHDR の後の数字はパネルのピーク輝度を表すものである。400 以外にも 500 / 600 / 1000 / 1400、さらに有機EL向けの 400 True Black / 500 True Blackも存在する。

また、U2720Qは公式サイトには HDCP 1.4 までと書かれているが、マニュアルにはきちんと HDCP 2.2 と表記があるし、実際 HDCP 2.2 がかかった信号も問題なく処理できており、UHD BD、Netflix の 4K コンテンツ、新 4K 衛星放送などを 2K ダウンコンバートされることなく (= HDCP 1.4 に落とされること無く) 4K で楽しむことができた。

U2720Q のプリセットモード

説明書の説明は大雑把なので、自分なりに検証してみた。測定した値ではなく自分の目で見た結果なので、正確性は保証できない。

表示色域 色温度 (白色点)
標準 パネル (ほぼP3) パネル (D65付近)
ComfortView パネル (ほぼP3) D50以下?
ムービー パネル (ほぼP3) D93付近
ゲーム パネル (ほぼP3) D65付近
色温度 パネル (ほぼP3) D50、D57、D65、
D75、D93、D100
色空間 sRGB Rec.709 (99%) D65付近
DCI-P3 P3 (95%) D63付近
ユーザーカラー 設定値
(未調整時:パネル)
設定値
(未調整時:パネル)

色空間モードで色域を選択するか、ユーザーカラーモードで色を調整でもしない限り、基本的には KH2750V-UHD 同様パネルの色域にまで拡張されるようだ。別にこれは悪いわけではなく、「高画質」からは確かに遠のくが、きちんと処理されていれば好ましい画に近づけることができる。後ほどこのモードを評価してみる。個人的には説明書で「映画に最適です」と謳っているムービーモードの色温度が D93 なのが解せない。

色空間モードでは各規格独自の白色点が使用される。「なんで色域と色温度を別々に設定できないんだ」と思う方もいるかもしれないが、そもそも sRGB や DCI-P3 という規格は色域だけでなく白色点(色温度)やガンマも定められている規格であり、U2720Q はそれらの規格に沿った表示をしているだけである。

色温度モードでは色域を選択できない。映像ではガンマ 1.9 (Rec.709 本来?)、2.2 (sRGB)、2.4 (BT.1886)、2.6 (DCI)などの Rec.709 が用いられている。海外ではこれらの色温度に D65 が使用されることが多いのだが、日本では D93 で制作されることが多い。D65 の Rec.709 コンテンツを (ガンマはともかく) ちゃんと表示するなら sRGB モードで対応できるが、D93 の Rec.709 コンテンツの色域も色温度も正確に表示する術は U2720Q には存在しない。

また、DCI-P3 と似た規格に Display P3 という規格もある。DCI-P3 は映画館における SDR のデジタルシネマ仕様の規格 (P3、D63、ガンマ2.6)で、Display P3 は Apple が DCI-P3 の色域 (P3) に sRGBの白色点 (D65) とガンマ (2.2) を組み合わせた規格である。U2720Q が表示モードとして対応しているのは DCI-P3 の方である。

なお、カラーマネジメント対応ソフトで ICC プロファイルを使用した画像表示でもしない限り、モニターは映像信号の色域を判断する術がないので、DCI-P3 モードで sRGB などのコンテンツを表示した際には、そのコンテンツの色域は P3 に拡張された状態で表示される。

KH2750V-UHD では HDR 時は一部の設定が変更不可能になると書いたが、U2720Q も HDR 時には制約があり、プリセットモードと輝度が変更不可能になる。ちなみに SDR であってもプリセットモードでムービーモードかゲームモードを使用した際にもなぜか輝度が調整不可能となる。

U2720Q の画質

まずはプリセットモード:標準にて SDR コンテンツの表示を試してみる。左が U2720Q、右が KH2750V-UHD である。

まず気づくのは、このモニターのパネルは原色に近いぐらいの強い赤色を出せるということ。DCI-P3 モードと比較しても赤が強いぐらいだ。これだけ強い赤が出せるのを見ると、他機種のパネルの赤色が朱色に見えてくる。緑や青に関しては赤ほど強くはなく、DCI-P3 モードとほぼ変わらない。各色ちゃんとしっかり出ているが、かと言って彩度が強く派手すぎるといった感じでもない。

この赤の発色はとても写真では伝えられないので、実機を見る機会があればぜひその目で確かめてほしいのだが、このモニターは販路が狭く、家電量販店ではそもそも取り扱っていなかったりする。このモニターの良さを購入前に体験しにくいのが惜しい。

また、高輝度部が飽和していたり、低輝度部が黒く潰れてしまっているということもほぼない。かと言って低コントラストで眠い画になってしまっているということもない。コントラスト比が KH2750V-UHD の 1000:1 から 1300:1 に向上したおかげか Dell の画作りのおかげか、U2720Q は色もコントラストもバランスの取れた表示をしていて、好ましい画質だと感じられた。KH2750V-UHD とは大違いだ。


次は HDR コンテンツを Smart HDR の DisplayHDR モードで。左が U2720Q、右が KH2750V-UHD。4K / HDR 対応の AV アンプ (YAMAHA RX-V781) でスプリット出力しているので、入力信号は全く同じ。

やはり KH2750V-UHD は U2720Q と比較しても黄色っぽい。特に果物の映像では上のオレンジと思しき果物が黄色に寄っている上に、下のレモンと思しき果物が蛍光色をしており、もはや別の果物に見える。その隣のカメレオンの映像では、木が不自然に黄色い。おかしいのは Xperia XZ2 Premium でも Pixel 3 XL でも Dolby Cinema でも自分の色彩感覚でもなく、KH2750V-UHD だった。

U2720Q (350nit / HDR時ピーク400nit) は KH2750V-UHD (250nit) よりも輝度が高いので、HDR コンテンツを表示すると KH2750V-UHD よりも白飛びが起きにくい。例えば画像6枚目、カメレオンの口から出ている炎の白く飛んでいる箇所が KH2750V-UHD よりも少ないのがお分かりいただけるだろうか。この辺りは正直どんなトーンマッピングするか (特に高輝度域をどれだけロールオフするか) によって白飛びの具合も変わってくるのだが、それでもパネルのスペックによる差も十分出る部分である。

また、U2720Q は KH2750V-UHD よりも暗部階調の再現性が高く、暗部をそこまで浮かせたりはしていないので、先程 KH2750V-UHD の評価でも使用した「Core Universe」の黒の比較シーンでは、後者 (HDR) の黒のほうがより締まって見える。

HDR では、SDR の限界を超えた高輝度部や低輝度部にきちんと色を置いてあげることができる。明るいところを明るいまま、暗いところを暗いまま表現できることによって、コントラストが向上し画に立体感が生まれたり、色に透明感が出たりするというのが特徴だ。そのため、HDR では輝度と暗部階調は画質面においてとても重要な要素だ。

U2720Q と KH2750V-UHD の映像情報表示

映像情報表示の詳細さに関しては、解像度、FPS、クロマサブサンプリング、色深度、SDR / HDR を表示できる KH2750V-UHD に満足していた(要設定)。

KH2750V-UHDの映像情報表示

しかし、U2720Q では解像度、I / P、色深度、SDR / HDR 程度しか表示できない。しかも U2720Q は「デイスプレー情報」や「モテル」など、ちょくちょく日本語が怪しい。

U2720Q の映像情報表示

FPS なら AV アンプで表示できるが、クロマサブサンプリングはどうしようもない。

YAMAHA RX-V781 (AV アンプ) の映像情報表示

それに、U2720Q の情報表示はメニューの階層を辿らないと出ないが、KH2750V-UHD はダイレクト機能をオフにすることで、電源ボタンを除く任意のボタン一発で映像情報表示することができる。

映像情報の出しやすさと詳細さに関しては、KH2750V-UHD の方が強い。なお、先程挙げた LG のモニターも、展示機を触ってみた限りでは KH2750V-UHD ほど詳細な表示はできなさそうだった。この点 (だけ) は KH2750V-UHD を気に入っている。

U2720Q と DIGA の相性問題(?)

KH2750V-UHD も U2720Q もパネルの色深度は各色 10bit (U2720Q は 8bit + FRC、KH2750V-UHD は不明)だが、各色 12bit の信号を受け取ることもできる。

KH2750V-UHD では、Panasonic の DIGA DMR-4W200 (4K レコーダー / UHD BDプレーヤー) で「DeepColor出力の設定」を「オート(12bit優先)」にすると、SDR コンテンツでも HDR コンテンツでも 12bit 出力された。

(先程の画像の流用)

U2720Q でも「オート(12bit優先)」では SDR コンテンツは 12bit出力 (U2720Q 側の情報表示では RGB 合計の 36bit 表示)されたが、

(先程の画像の流用)

HDR コンテンツはなんと 8bit (合計 24bit) 出力に制限された。SDR ならともかく、HDR で 8bit は厳しい。

U2720Qでは、HDR映像入力時は右上に「HDR+」と表示される。

HDR を 10bit で出力するなら「オート(10bit優先)」にしないといけなかった。この場合、SDR コンテンツも HDR コンテンツも 10bit 出力となる。

なんだかよく分からない問題だったが、幸い U2720Q に色深度を表示する機能があったので気づくことができた。

おわりに

Dell U2720Q は 400nit というのが HDR には少し物足りないが、SDR だろうが HDR だろうが重要な各色域のカバー率が一定以上の水準にあり、実際の表示も好ましい画質であり、スタンド調整の自由度が高く、プレミアムパネル保証や良品先出しサービスが付いてくる。こんなモニターが5万円程度で手に入ったということを考えると、すごく満足度の高い買い物となった。

井戸水

ガジェットやオーディオビジュアルが好きな人。

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